『日本を元気にする古事記のこころ』著者:小野善一郎氏インタビュー

日本を元気にする「古事記のこころ」著者・小野善一郎氏インタビュー

『古事記』の真髄に迫れる一冊

日本を元気にする古事記の「こころ」著:小野善一郎(青林堂)
日本を元気にする古事記の「こころ」著:小野善一郎(青林堂)

日本に現存する最古の書物『古事記』
神社に祀られている神様の多くは古事記に登場する神様です。古事記を知れば知るほど、参拝も楽しくなりますよね!

当サイト管理人も古事記関連の漫画・書籍は何冊も読みました。

ただ・・古事記を”物語”として覚えたとしても、その物語が“何を伝えようとしているのか?”という本質部分に関しては、「よくわからない・・」というのが正直なところでした・・。
そんな時に出会った一冊が『日本を元気にする古事記の「こころ」』です。

日本を元気にする古事記の「こころ」』の特徴は、古事記の物語を”祓えの観点”から解説されていることです。古事記を通して日々の生き方や考え方も学べる一冊になっています。

著者の小野善一郎先生は神社検定を主催する団体『日本文化興隆財団』の講師も務められ、全国各地で「古事記」関連の講演・講座を行われている方です(コロナ前には月70ヶ所でお話されていたとか!)。
湯島天満宮で権禰宜を務められ、2019年12月からは渋川八幡宮(群馬県渋川市)・伊香保神社宮司として奉職されています。

今回はそんな小野先生にインタビューさせて頂き「古事記の本質とは?」「古事記が伝える日本人のこころとは?」等について熱く語って頂きました。

小野善一郎先生
日本を元気にする古事記の「こころ」 著者:小野善一郎先生(撮影:白須法男)
小野善一郎先生 小野 善一郎
渋川八幡宮・伊香保神社宮司。元・湯島天満宮権禰宜。國學院大學兼任講師、博士(神道学)。神社本庁の外郭団体である日本文化興隆財団などで神道関連講座の講師を務める。
著書に『伊勢神道思想の形成』(日本文化興隆財団)、『あなたを幸せにする大祓詞』『新嘗のこころ』(以上、青林堂)などがある。
渋川八幡宮公式サイト
古事記のこころ.net(最新情報)

著者:小野善一郎氏インタビュー

「古事記のこころ講座」で笑顔を見せる小野先生
「古事記のこころ講座」で笑顔を見せる小野先生
ピンク
御朱印巡りをきっかけに『古事記』に興味を持った人も多いと思います。
古事記を学ぶことの意味を教えていただけますか。
小野先生
我々の先祖は単なる”物語”を後世に伝えようとは思っていないんですよ。
古事記を学ぶということは、語られている物語を通して自分自身の”本質”を学ぶことです。本当の自分は何かを学ぶのです。
ピンク
古事記から自分自身を学ぶというのは、例えばどういうことでしょうか?
小野先生
例えば古事記では伊邪那岐命いざなきのみことは”憎み””恨み”という異心ことごころ(※)に占領されて火之迦具土神ひのかぐつちのかみの首を斬ってしまわれた。
しかし、これは目の前にいる火之迦具土神を斬った訳ではなく“憎いと思う自らの異心を斬った”(祓った)のです。神社のお祓いも、この”異心”を祓っているんです。
※異心(ことごころ)
辛い・苦しい・妬み・人の悪口・嫉妬・傲慢・不安・他人と比べるといった心。罪、けがれ。
※祓え
心身についた罪を禊などの儀礼や唱え言葉によって取り祓って清浄にすること

古事記を”祓え”の観点から読み解く

小野先生
日常でも奥さんや旦那さんに腹を立てることもあるでしょう?
これらの心は自分にとっても気持ちの良いものではない。これらも異心です。
ピンク
なぜあの人は◯◯してくれないの?」という異心だらけかも・・(苦笑)
異心があると自分自身にどのような悪影響があるのでしょうか?
小野先生
私たちは同じものを見ていても、その心境によってそれぞれに”異なった感じ方”をしています。眼前の存在世界は心の反映であり、自らの一心から生まれています。
ピンク
心の状態が”現実”を作り出しているのですね。
小野先生
そうです。
だから産まれたばかりの赤ん坊は全部わかっているんですよ。自我がない、異心がない状態だからです。
だけど3歳くらいになると自我が覆ってしまう。自我で覆ってしまうと覆ってしまった世界しか見えません。
ピンク
赤ちゃんから大人になるということは、色眼鏡をかけて世界を見てしまっているということでしょうか?
小野先生
そうです。
昔は民謡を歌いながら畑仕事していたでしょう。あれも「辛い」という異心を祓って楽しみに変えていたんです。
“異心”というものは天地(※)にはない。天地にないものは祓うことができるんです。このことを物語で説いているのが古事記なんですよ。
※天地
「てんち」または「あめつち」。この世界のこと。または宇宙そのもの。
古事記の冒頭の一節には「天地初発時(あめつちはじめのとき)」とあり、「大宇宙は最初からあった」と古事記は述べています。最も大事なこと。
ピンク
なるほど!同じ事をしても心の状態によって感じ方が全く違うというのは誰しも経験していると思います。
古事記の物語も「異心を祓う」という観点で読むと大きな気付きがありそうです!

神社では毎日岩戸が開かれている?!

天の岩屋戸神話
天照大御神を岩戸から引き出す『天の岩屋戸』神話
ピンク
古事記の中でも有名な「天の岩屋戸」は”祓えの観点”からどのように解釈すると良いのでしょうか?
小野先生
「天岩屋戸」物語では、天照大御神あまてらすおおみかみが岩戸に閉じこもられてしまう前、八百万の神々は須佐之男命すさのおのみことの乱暴を見て見ぬふりをしたでしょう。これが異心。物語でいうと「岩戸閉じ」だったんです。
ピンク
八百万の神々は須佐之男命を正すことも出来たのに、無関心を装った(異心)。この比喩としての岩戸閉じだったのですね!
小野先生
すると天照大御神がお隠れになってしまい「どうしよう」という時にお祭りが生まれた。
岩戸祭祀を行い異心が祓われたから、岩戸が開かれたのです。
ピンク
なるほど!天宇受賣命あめのうずめのみことが踊って笑わせた、などのストーリーもありますが、皆の心が祓われたことが大事だったのですね。
小野先生
天の石屋戸古伝承は神社祭祀の起源といわれています。つまり神社では毎日岩戸開きが行われているんですよ。神社で行われている正式参拝もお祭りも、全部岩戸祭祀です。
神社のお祓いでは、異心を放念する事が出来るのです。
ピンク
「天の岩屋戸」物語の理解が深まりました!
ちなみに小野先生でも異心が出てしまうことはあるのですか?
小野先生
もう毎日です!(笑)
神社の境内には毎日落ち葉が積もるでしょう?それと同じですよ。だから私は毎日掃除をしますし、毎日大祓詞を唱えて異心を斬るんです!

大祓詞について

『大祓詞』は神職だけのものではない?
『大祓詞』は神職だけのものではない?
大祓詞
大祓詞おおはらえのことばは、神社の祭祀に用いられる祝詞のりとの一つ。
ピンク
異心を祓う為に大祓詞を唱えるというお話がありました。
大祓詞はどのような意味を持つ祝詞なのでしょうか?
小野先生
神社の祝詞は大祓詞一巻奏上で、大祓詞は日本に古代より伝わる最も古い祝詞です。
あらゆる祭祀、全部本当は大祓詞だけでよいのです。そのくらいに大切な祝詞が「大祓詞」です。

「大祓詞」は世界を救う

小野先生は大祓詞に関する本も書かれています。大人気「日本の神様カード」の著者・大野百合子先生との共著『日本最強の言霊 大祓詞(徳間書店)』や『あなたを幸せにする大祓詞(青林堂)』など。
日本最強の言霊 大祓詞 すべてがうまくいく!魔法の言葉(大野百合子・小野善一郎/徳間書店)
日本最強の言霊 大祓詞 すべてがうまくいく!魔法の言葉(小野善一郎・大野百合子/徳間書店)
日本最強の言霊『大祓詞』すべてがうまくいく!魔法の言葉
小野先生
大祓詞の最後に「罪という罪はない」とあります。この罪というのは異心です。異心は天地にはないんです。
天地に初めからないものは祓うことが出来るんです。それが理解できれば、それこそが究極の世界平和だと思いますよ。大祓詞は世界を救うと思います。
ピンク
大祓詞が世界平和に繋がるのですか!?
小野先生
ウクライナやロシアに行って平和を訴えることだけが世界平和ではないのです。ひとりひとりが本気になって異心を祓い、”自分の本体”を明らかにすること。
そうすれば必ず隣の人の御扉が開いていきますよ。開かないということは本気ではないということです。その拠り所が「大祓詞」です。
ピンク
他人に要求したり、物事を動かそうとするから余計に争いが起こってしまう・・。まずは自分自身を祓うのですね。
大祓詞を奏上する小野先生
大祓詞を奏上する小野先生
小野先生
われわれは、はじめから与えられているのですよ。全部もらってるのに私たちが異心を勝手に覆っているから見えないんです。そういった日本人が本来持っている文化、生き方の本質というものが世界中に求められていると思います。
欧米的な、唯物論的な考え方だと成功すると「俺の力だ」と天狗になってしまうでしょう?
ピンク
自分は優れているという慢心(異心)ですね。
小野先生
近代主義は行き詰まっています。それを乗り越えられるのは日本人、そして神道です。
茶道、華道、合気道、柔道、道という道はすべて「大祓詞」です。居合道でも同じ型を1,000回くらいやり続けるでしょう。すると嫌になることが出てくる。その嫌になる気持ちを祓うんです。敵は向こうにいるのではなく、常に自分なのです。
その道を極めた人、例えば一流のアスリートである大谷選手や羽生選手などもそうでしょう。自我を祓って結果を出すことをよく理解されていると思います。
ピンク
私も一流になりたい!小野先生の動画を見ながら「大祓詞」を唱えて自我を祓いたいと思います!

↑小野先生が唱える「大祓詞」(再生回数10万回超え!)。毎日一緒に奏上することで異心が祓われる!

神道の本質とは?

YouTube
写真提供:小野善一郎 今、時代の大転換点!執着を捨て一貫のいのちを体感する、大祓詞と日本人の目覚め(和の国チャンネル)
ピンク
先ほど「神道」についてのお話もありました。神道の本質について教えてください。
小野先生
神道の本質は”異心を払う”ということです。
神道をおもしろおかしく伝えると、どうしても枝葉になってしまいます。枝葉で終わらないためには論理や理屈ではなく、自分が心から感得することが先です。
ピンク
感得することは簡単なことではないように思いますが、そのために必要な最初のステップは何でしょうか?
小野先生
それは神社の祭り・神事に参加することです。
参拝の際に祝詞(大祓詞)を唱えると、天の岩屋戸が開けて天照大御神がお出になる。
しかし目の前に現れるのではなく私たちの心に現れるのです。このことを文字ではなく儀礼で伝えてきたのが神社の儀礼・お祭りです。
ピンク
最近お神輿を担がせて頂いたのですが、とても清々しい気持ちになりました。今後も神社の祭り・神事に積極的に参加したいと思います。

小野先生からのメッセージ


ピンク
最後にこの記事を読んでいる方へ一言メッセージを頂けますか?
小野先生
ぜひ皆さんもご近所の神社や、お気に入りの神社のお祭りに参加してみてください。大祓詞のことも気にかけていただけると、もっと神社巡りが意義深いものになると思いますよ。
ピンク
小野先生、貴重なお時間をありがとうございました!

今回のインタビューでは古事記の「天の岩屋戸」物語についての解釈(一部)をお聞きしましたが、『日本を元気にする古事記の「こころ」』の中では天地開闢~天孫降臨までの物語を取り上げ、その意味や解釈が徹底解説されています。

古事記を読んだことがない方はもちろん、「古事記の大体の流れは知っている」という方にもおすすめの一冊です。

小野善一郎氏の関連情報

本をテキストにした「古事記のこころ講座」が隔月で開催中

写真提供:和の国チャンネル
写真提供:和の国チャンネル

日本を元気にする古事記の「こころ」をテキストにした講座が富岡八幡宮(東京都江東区)にて隔月開催中です。
当日参加できない方、遠方の方向けにオンライン配信も行われていますので是非チェックしてみてください。

「古事記のこころ」講座 @富岡八幡宮
日程 2024年5月18日(土) 14:00〜
第16回「ニニギの誕生と天孫降臨」
※13:00~正式参拝あり(12:50に集合/初穂料1,000円)
※終演後~直会・懇親会予定(参加費1,000円)
開催場所 富岡八幡宮(東京都江東区)
講師 小野善一郎先生(渋川八幡宮宮司)
申し込み 小野先生「古事記のこころ」講座特設ページ

大祓詞A5クリアファイル
奏上することで”すべてが祓われる”という大祓詞。どこでも奏上できるように大祓詞を暗記しておくと便利です。小野先生によれば「毎日一日三回奏上していれば半年ほどで暗記できる」そうです!

大祓詞を暗記する際に役立つアイテムが『大祓詞クリアファイル』。クリアファイルなら持ち歩いて好きな場所で大祓詞を奏上出来ますし、お風呂場で暗記するにも役立ちます。
A5サイズは書置き御朱印を頂いた際の一時保管にも便利ですよ。

『大祓詞クリアファイル』は、上記の小野先生の講演会会場で販売されている他、『和の国ショップ』で販売されています。ぜひチェックしてみてください。

渋川八幡宮・伊香保神社へ行ってみよう!


↑小野先生が宮司を務める渋川八幡宮の案内動画和の国チャンネル
渋川八幡宮に行きたくなります!


同じく小野先生が宮司を務める伊香保神社いかほじんじゃ(渋川八幡宮の管轄社)。伊香保温泉の365段の石段を登りきった場所に鎮座しています。

伊香保神社の御朱印
書き手さんがいらっしゃる日のみ素敵な御朱印も頂けます。

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まとめ

この記事では、古事記の本質を学べる『日本を元気にする古事記のこころ』の著者・小野善一郎先生にインタビューさせて頂きました。

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